オープンデータで行う商圏分析②~出店候補地の絞り込み~
【2022/9/28】
↓前回の記事はこちら↓
「オープンデータで行う商圏分析①~出店エリアの選定~」
前回の記事では、東京都内を対象として、国勢調査によるオープンデータの分析から、出店エリアとして江東区を選定しました。
今回は、出店エリア内で検討した出店候補地の中から、より詳細な分析を行うことで最適な出店地を絞り込んでいきます。
「オープンデータで行う商圏分析①~出店エリアの選定~」
前回の記事では、東京都内を対象として、国勢調査によるオープンデータの分析から、出店エリアとして江東区を選定しました。
今回は、出店エリア内で検討した出店候補地の中から、より詳細な分析を行うことで最適な出店地を絞り込んでいきます。
東京都内を対象にした出店計画の作成:候補地の絞り込み
各候補地の特徴
出店エリアとして選定された江東区内で、出店候補地を4箇所ピックアップしました。
各候補地の特徴は次の通りです。
各候補地の特徴は次の通りです。
※背景に地理院地図(白地図)を表示させています。
出店候補地 | 特徴 |
候補地① | 車通りの多い交差点に面しており、鉄道駅からも近い。 |
候補地② | 比較的大きな道路沿いで、近くに大きな公園がある。 |
候補地③ | 人通りの多い商店街から少し離れた場所にある落ち着いた地域。 |
候補地④ | 周囲の地域の0~14歳人口が多い。鉄道駅から近く、交通の便が良い。 |
※用地面積や出店費用等の条件は同等であるとします。
これらの候補地の地域特性を各種のオープンデータを利用して分析し、出店地の絞り込みを行います。
これらの候補地の地域特性を各種のオープンデータを利用して分析し、出店地の絞り込みを行います。
①生活様式データ:パーソントリップ調査
まずは、地域の生活様式をうかがい知るために、「東京都市圏パーソントリップ調査」のデータを利用します。
「東京都市圏パーソントリップ調査」は、東京都市圏でどのくらいの人数がどのような手段で移動したかを把握するための調査で、10年毎に実施されています。
公開データには発着地、目的(通勤、買い物等)、代表交通手段(※1)毎のトリップ数(※2)が含まれています。
「東京都市圏パーソントリップ調査」は、東京都市圏でどのくらいの人数がどのような手段で移動したかを把握するための調査で、10年毎に実施されています。
公開データには発着地、目的(通勤、買い物等)、代表交通手段(※1)毎のトリップ数(※2)が含まれています。
イメージ図
※1 代表交通手段
一つのトリップでいくつかの交通手段を乗り換えた場合、その中の主な交通手段。
※2 トリップ
人がある目的をもって、ある地点からある地点へと移動する単位。
一つのトリップでいくつかの交通手段を乗り換えた場合、その中の主な交通手段。
※2 トリップ
人がある目的をもって、ある地点からある地点へと移動する単位。
このデータをGIS上で可視化することで、人の生活様式をよく表す移動の特性を分かりやすく表現することができます。
≪使用データ≫
・国土数値情報ダウンロードサービス「交通流動量 パーソントリップOD量データ/関東圏」
≪使用データ≫
・国土数値情報ダウンロードサービス「交通流動量 パーソントリップOD量データ/関東圏」
1. 国土数値情報ダウンロードサービス「交通流動量 パーソントリップOD量データ/関東圏」をダウンロードし、
[インポート]-[国土交通省]-[国土数値情報シェープファイル]を利用してPC-MAPPINGにインポートします。
そのままでは大量の線が表示され、見づらいため、着ゾーンコードが「0345」「0347」「0348」(出店候補地の近辺)であるものを検索により抽出し、それ以外の線は削除して表示します。
描画パラメーターを利用して、総トリップ数毎に色を変えて表現すると、更に傾向が分かりやすくなります。
[インポート]-[国土交通省]-[国土数値情報シェープファイル]を利用してPC-MAPPINGにインポートします。
そのままでは大量の線が表示され、見づらいため、着ゾーンコードが「0345」「0347」「0348」(出店候補地の近辺)であるものを検索により抽出し、それ以外の線は削除して表示します。
描画パラメーターを利用して、総トリップ数毎に色を変えて表現すると、更に傾向が分かりやすくなります。
2. 買い物や食事などが目的のトリップは「自由トリップ」に分類されるため、各移動手段の自由トリップ数を抽出し、[データベース]-[編集]-[演算・集計]-[集計・統計処理]を利用して移動手段毎に集計を行います。
移動手段としては「徒歩」が最も多く、「二輪」「鉄道」が続く結果となりました。
移動手段としては「徒歩」が最も多く、「二輪」「鉄道」が続く結果となりました。
3. 徒歩での自由トリップ数がゼロではない線のみを残して描画すると、左図のようになります。
近隣からの来訪が多いということで、駅前や国道沿い等、遠方からの来訪者だけを主なターゲットにはせず、幅広く出店候補地を検討することにします。
近隣からの来訪が多いということで、駅前や国道沿い等、遠方からの来訪者だけを主なターゲットにはせず、幅広く出店候補地を検討することにします。
②競合データ:食品等営業許可届出一覧
次に、地域特性のうち競合の分析を行います。
今回は、レストランの出店計画ということで、競合を表すデータとして、江東区がオープンデータとして提供している「食品等営業許可・届け出一覧」を利用します。
競合の勢力圏を分析・可視化する時には、ボロノイ図の利用が有効です。
今回は、レストランの出店計画ということで、競合を表すデータとして、江東区がオープンデータとして提供している「食品等営業許可・届け出一覧」を利用します。
競合の勢力圏を分析・可視化する時には、ボロノイ図の利用が有効です。
ボロノイ図とは、点(母点)が存在する平面を、どの点に一番近いかによって領域分割(ボロノイ分割)して出来る図のことです。
ボロノイ分割により作成された境界線を「ボロノイ境界」、ボロノイ境界の交点を「ボロノイ点」と呼びます。
つまり、ボロノイ境界やボロノイ点に近い地域が、他の店舗の勢力があまり及んでいない地域ということになります。
ボロノイ分割により作成された境界線を「ボロノイ境界」、ボロノイ境界の交点を「ボロノイ点」と呼びます。
つまり、ボロノイ境界やボロノイ点に近い地域が、他の店舗の勢力があまり及んでいない地域ということになります。
PC-MAPPINGでは、各種の位置情報データから生成したポイントを元に、ボロノイ図を作成することができます。
ここでは、「江東区の食品等営業許可・届け出一覧」の座標情報から生成したポイントを元にボロノイ図を作成し、競合の勢力圏の分析を行います。
≪使用データ≫
・江東区オープンデータ「江東区の食品等営業許可・届け出一覧」
ここでは、「江東区の食品等営業許可・届け出一覧」の座標情報から生成したポイントを元にボロノイ図を作成し、競合の勢力圏の分析を行います。
≪使用データ≫
・江東区オープンデータ「江東区の食品等営業許可・届け出一覧」
出店候補地(①~④)と競合店舗を重ね合わせて表示
1. 江東区オープンデータ「江東区の食品等営業許可・届け出一覧」(CSV形式)をダウンロードし、外部データベースとして取り込みます。
参考:MAPCOM WORLD TOPICS「GISでのデータベースの利用② ~外部データベースの利用~」
データには、施設所在地(住所)の他、経度・緯度の情報が含まれているため、[座標データのベクター変換]機能を利用して、経度・緯度の値から店舗の位置を表すポイントデータを生成します。
参考:MAPCOM WORLD TOPICS「GISでのデータベースの利用② ~外部データベースの利用~」
データには、施設所在地(住所)の他、経度・緯度の情報が含まれているため、[座標データのベクター変換]機能を利用して、経度・緯度の値から店舗の位置を表すポイントデータを生成します。
2. [ツール]-[空間統計解析]-[空間解析]-[ボロノイ分割図生成]を実行すると、設定ダイアログが表示されます。
今回はデフォルトの設定のまま「OK」ボタンをクリックします。
今回はデフォルトの設定のまま「OK」ボタンをクリックします。
3. ボロノイ分割処理が実行され、ボロノイ図レイヤーがプロジェクトに登録されます。
出店候補地付近を拡大表示してみると、候補地①・④は、既存の店舗の勢力圏内に位置する一方、候補地②・③は、ボロノイ点付近に位置しており、比較的競合の影響が小さいと考えられます。
以上より、競合の観点からは、候補地②・③が優位であることが分かりました。
出店候補地付近を拡大表示してみると、候補地①・④は、既存の店舗の勢力圏内に位置する一方、候補地②・③は、ボロノイ点付近に位置しており、比較的競合の影響が小さいと考えられます。
以上より、競合の観点からは、候補地②・③が優位であることが分かりました。
③地理的特性データ:区立公園データ
最後に、地域特性のうち地理的な特性を検討していきます。
今回は、ファミリー向けのレストランの出店計画を作成するため、公園からの距離を指標として用いることにしました。
ある地点から一定の距離の地域を表示したり、その区域内に含まれる地点を抽出したりする場合には、PC-MAPPINGのバッファー生成機能が利用できます。
今回は、ファミリー向けのレストランの出店計画を作成するため、公園からの距離を指標として用いることにしました。
ある地点から一定の距離の地域を表示したり、その区域内に含まれる地点を抽出したりする場合には、PC-MAPPINGのバッファー生成機能が利用できます。
例えば、ある地点から徒歩5分圏内の地域を抽出したい場合、徒歩の移動速度を分速80mとすると、半径400mの円に含まれる地域を抽出すればよい、ということになります。
PC-MAPPINGでは、ポイント以外にも、アーク(線)やポリゴン(面)から一定の距離のバッファーを生成することができるため、例えば道路から一定距離の地域を抽出するといったことも可能となります。
PC-MAPPINGでは、ポイント以外にも、アーク(線)やポリゴン(面)から一定の距離のバッファーを生成することができるため、例えば道路から一定距離の地域を抽出するといったことも可能となります。
今回は、江東区の区立公園オープンデータから公園の位置を表すポイントを生成し、そのポイントから一定距離のバッファーを生成して公園に近い地域を抽出します。
≪使用データ≫
・江東区オープンデータ「江東区の公共施設一覧_区立公園」
≪使用データ≫
・江東区オープンデータ「江東区の公共施設一覧_区立公園」
出店候補地(①~④)と区立公園位置を重ね合わせて表示
1. 江東区オープンデータ「江東区の公共施設一覧_区立公園」をダウンロードし、外部データベースとして取り込みます。
データには、住所情報の他、経度・緯度の情報が含まれているため、[座標データのベクター変換]機能を利用して、経度・緯度の値から区立公園の位置を表すポイントデータを生成します。
データには、住所情報の他、経度・緯度の情報が含まれているため、[座標データのベクター変換]機能を利用して、経度・緯度の値から区立公園の位置を表すポイントデータを生成します。
2. 一定の規模の公園を抽出するために、区立公園データに含まれている公衆便所の有無の情報を利用して、公衆便所がある公園のみを分析対象とします。
検索メニューを利用して、公衆便所がある公園を選択状態にします。
検索メニューを利用して、公衆便所がある公園を選択状態にします。
3. [ツール]-[領域検索]-[バッファー生成]-[バッファー生成]を実行し、ダイアログで設定を行います。
今回は、公園からおおよそ徒歩5分の地域ということで、半径400mのバッファーを生成します。
「ポイントから生成する」チェックボックスをオンにし、「選択要素のみ」もチェックオンにします。
その他、適宜設定して「OK」ボタンをクリックします。
今回は、公園からおおよそ徒歩5分の地域ということで、半径400mのバッファーを生成します。
「ポイントから生成する」チェックボックスをオンにし、「選択要素のみ」もチェックオンにします。
その他、適宜設定して「OK」ボタンをクリックします。
4. バッファー生成処理が実行され、画面上に表示されます(左図は分かりやすいようにバッファーポリゴンを描画パラメーターを用いて着色したもの)。
バッファーの重複や空白地帯を確認します。
候補地①・③はバッファーの外側で、公園から離れた地域であるのに対し、候補地②・④は、バッファーが重複している地域に位置しており、複数の公園から近い場所であることが分かります。
以上より、地理的特性の観点からは、候補地②・④が優位であるという結果となりました。
バッファーの重複や空白地帯を確認します。
候補地①・③はバッファーの外側で、公園から離れた地域であるのに対し、候補地②・④は、バッファーが重複している地域に位置しており、複数の公園から近い場所であることが分かります。
以上より、地理的特性の観点からは、候補地②・④が優位であるという結果となりました。
競合・地理的特性からの分析結果から、両方の条件で結果が良好な候補地②が有力な出店候補地であることが分かりました。
より詳細な分析を行いたい場合は、更に条件を設定し、その条件の基準となるデータを元にして分析を進めていくことになります。
より詳細な分析を行いたい場合は、更に条件を設定し、その条件の基準となるデータを元にして分析を進めていくことになります。
GISの空間解析機能・データベース機能を利用した商圏分析
今回の出店計画の作成において利用した機能は、PC-MAPPINGで利用できる機能のごく一部です。
PC-MAPPINGにはこの他にも、商圏分析等に利用できる各種の解析機能や、便利なデータベース機能等が備わっています。
また、今回紹介した「国土数値情報」や「地図で見る統計(統計GIS)」以外にも、各種のオープンデータや汎用フォーマット等のインポートに対応しております。
参考:製品・業務 - PC-MAPPING「インポート&エクスポート」
商圏分析をはじめとして、地図や位置情報にまつわる課題解決に、ぜひPC-MAPPINGをご利用ください!
お問い合わせはこちら
PC-MAPPINGにはこの他にも、商圏分析等に利用できる各種の解析機能や、便利なデータベース機能等が備わっています。
また、今回紹介した「国土数値情報」や「地図で見る統計(統計GIS)」以外にも、各種のオープンデータや汎用フォーマット等のインポートに対応しております。
参考:製品・業務 - PC-MAPPING「インポート&エクスポート」
商圏分析をはじめとして、地図や位置情報にまつわる課題解決に、ぜひPC-MAPPINGをご利用ください!
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